ハンディキャップ・プログラマ〜本当に怖いこと〜

脳を患って本当に怖かった事。まだ、完全に乗り越えられたわけではない事。それは、自分は本当に自分なのか?と言う若干哲学めいた問題だ。家族や、お見舞いに来てくれた会社の同僚は話しぶりから、以前と変わりないという。どうやら激変しているわけではないようだ。

 

でもなんだか、以前より感情を抑えるのが苦手になった気がする。忘れっぽくなってる気がする。そんな目に見えない誰も答えを知らない不安に押しつぶされそうになった。

 

極めつけは、いまの"自分"が脳の障害で明日には消えてしまうんじゃないか、今晩この瞬間寝てしまったら消えてしまうんじゃないか、明日には別人になってしまうんじゃないか…生き残ったお得意の論理的思考回路がそんな答えのないことで悩んだり不安を感じるのは意味がないと言っているのに、心の奥底から湧き上がる不安をおさえきれず、睡眠導入剤を使っても、夜は眠れなくなった。

 

中学生時代、近代哲学にハマり、書を読み漁り、デカルトの”我思う、故にわれあり”というかの有名な言葉に感銘をうけた少年が20年後、その言葉の本当の重みを実感することになったのだ。皮肉もここまでくると笑うしかない。

 

この問題に対する答えは出なかった。ただ、夜寝て朝起きて、”自分"が残ってることが当然になるぐらい実績を積むしかないという結論に落ち着き、日々を過ごしている。