ハンディキャップ・プログラマ〜とある看護の見習女子〜

時期的には、自分に何が起こったかを理解した頃、シルバーウィーク直前といった頃だろうか、おもむろに看護師 専門学校の学生の受け入れをお願いされる。腎臓を悪くしていた子供の頃の入院で同様のお願いをされ、悪い思いをした記憶がなかったのもあり(子供の頃の話なので、暇な入院生活に遊び相手が増えた程度の感覚だった)、自分が40歳手前のおっさんになっている事実をすっかり失念した状態で快諾していた。

 

実際に彼女がやってきたのはシルバーウィーク明けだったと記憶している。そう、気軽に引き受けたものの相手は20歳もそこそこの女の子だった。少し考えれば分かる話なのに、実際に会うまで全く考えていなかった。

 

日に焼けた肌が元気印のとても素直で一生懸命な女の子で、慣れない手つきでのバイタルチェックが初々しかった。1週間もした頃にはすっかり打ち解け、毎日彼女の雑談とも人生相談ともとれる世間話に妹に接するような気持ちで受け答えをしている自分がいた。

 

若い女の子が付いて良いですね、的なセクハラ発言的なことをいう人もいたが、一回り以上も年下の"女の子"としか表現できないような相手にどう懸想したらええねん、と内心ツッコミをいれていた。

 

とにかく麻痺のことを気にしてくれて、左手のリハビリに懸命に付き合ってくれた彼女は、3週間弱で次の研修に旅立っていった。去り際の"忠告”は「いつも自主練だ、自己研鑚の為の読書だ、と、入院中にも関わらずゆっくりしているところを見たことがない。休むことも覚えてくださいね」だった。妻にそれを伝えたところ「3週間ぐらいしか付き合ってない女の子に見ぬかれてるじゃない(ププ)」と言われ、妙に恥ずかしい気持ちになったのを覚えている。

 

彼女が将来立派な看護師になってくれるのを祈るばかりだ。