ハンディキャップ・プログラマ 〜そして、現実を知る〜

自分の置かれた状況を客観的に理解するのに倒れてから一ヶ月を要した。明らかに半身が麻痺して大変な事になっているのに、それをリアルとして受け入れ認識するのには脳卒中と麻痺という病が、まだ30代の自分には縁遠い存在すぎた。

 

どうやら、自分の体は元通りになるのは難しいと理解し始めたのは一般病棟にうつってしばらくたった9月も中旬だった。トイレにも自分の足ではいけず、ちょっと、どこかに力がはいると、自分の意思とは関係なく、筋緊張が走り固く握られる左手を目の前に「あれ?自分、人生的にやばくね?」と自問が始まった。

 

作業療法士タッチタイプの復活は難しいという(腕も満足に上がっていなかった)、自分の足でトイレにも行けない(当時)、あれ?社会復帰とか無理じゃね?どうするんだ、自分?

 

社会人としてもそうだが、夫としての自分にも存在価値を見いだせず、自分のレゾンデートルを問い続ける日々が始まった。が、自分の存在理由で悩んでいるぐらいは可愛いものだと後に気づくことになる。

 

脳に障害をもつというのは、病気慣れしていても、気難しく理屈っぽい自分には、受け入れるにはやっかいすぎた。